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本当のことが書いてある本

例えば一冊の本を「必ず読むように」といわれて渡されたようにして
僕たちは毎日その本を読まなければならない。
毎日必ず1ページめくる。
一日一ページ。それがきまりだ。
一日の仕事を終えて家に帰り、夕食をとり、そして、
「ああそうだ、本を読まなければ」といって、取り出す。
そして、夕べしおりをはさんだページの次のページを開く。

鏡のページをめくるように、
そこに映されてゆくのは、めくるごとに年老いてゆく自分。
最期のページにはいったい何が書いてあるのだろうか。

本当のことが書いてある本
一日1ページ。それがきまりだ。
一日の仕事を終えて家に帰り、夕食をとり、そして、
「ああそうだ、本を読まなければ」と思い出してその本を取り出す。
忘れたとしてもそれはそれでいいが、読んだ方がいい。
そして、夕べしおりをはさんだ、その次のページを開く。
そのページしか開くことはできない。

そのページには少なからず昨日のページと同じようなことが書いてあるが、
同じことが書いてあること決してない。
誰も一度も見たことはないけれども、知っているような気のするものが描かれている。
・・・そこにあるのはページを覗き込んだ自分自身の顔。
そのページは全くゆがみのない反射率99.999%の鏡でできている。

どのように見ようとそれは自分自身で決めることができる。
じっと覗き込んでもいいし、すぐに閉じてもいい。
開く前にお化粧してもいいし、帽子を深くかぶってもいい。
見たいようにみることができる。
いずれにせよ、
どのような自分であろうと、それが今日一日を終えようとしてゆく自分自身。

その鏡に向かって嘘をつくことはできない。
嘘をついたことさえ本当のことだからだ。

・・・というのはどうでしょう。ちょっと「ミヒャエル・エンデ」を気取ったような。ちなみに一巻が365ページあるこのシリーズが、52巻目に突入した。