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海外ひとり旅の事件簿4_3

ニセ警官あらわる3

ということで、走っているタクシーの後部座席で、ドアを開ける開けさせないの必死の攻防が続いた。
今思えば、ナイフで脅されもしなかったし、殴られもしなかったし、それにその偽者焦っていたし、おどおどしていた。太っていてそこそこ大柄ではあったが、小心者だったろうと思う。まあ、不幸中の幸いだったと思う。不幸中であることには変わりないので、そのこところはよろしく。
それで、ドアが開きかかったりするたびに、タクシードライバーが、後ろを振り向き、スピードを落とし、「ひえ〜〜〜、やめてくれ!!!」という顔をする。
僕はちょっとした隙にそのドライバーの頭をこづいたりもしたのではなかったかと思う。彼も小心者だったろうと思う。
どのくらいそういうやり取りが続いたのか。
僕はついに、大きくドアを開いた!!!
その全開になったドアをみて、ドライバーは引きつった顔をしながらキキキーッとスピードを落とした。
それがチャンスだった。
僕はタクシーから飛び降りた。気持ちとしては、ちゃんと立てそうな感じがして飛び降りたが、すっころんだ。痛くはなかった。そのかわり、恐怖がぞぞーっと顔を引きつらせた。
ニセ警官はリヤウィンドウから振り返って僕を見たように思う。そして、タクシーはそのまま行ってしまった。行ってしまったが、あたりには未だ人影はない。戻ってきたら、そう思うと恐怖はつのった。
相手は車だし、もし戻ってきたら逃げ切ることはできないだろう。どうしたものだろうか。カメラを急いでバッグに戻しながら、途方に暮れる。
ちょっと話はそれるが、旅の醍醐味は「途方に暮れること」だと僕は思っている。だが、こういうのはもう二度とご勘弁願いたい。
話を戻す。そうこうしているうちに、さっきのタクシーらしい車がちょっと先の大きな通りを、左から右へと走っていった。僕に気づいたかどうかはわからない。もし僕を探すなら違う道へ行きたがるだろうと思い、その大きな通りの方に行くことにした。

それっきりだった。
どうやってホテルに帰ったのかは覚えていない。

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